昭和の歌本 楽曲レビュー集

月刊明星・月刊平凡の付録歌本の楽曲レビューを振り返るブログです。

おもしろニュース定期便 Music Liner ヘヴィメタル大特集 明星 YOUNG SONG 1984年8月号

もしろニュース定期便 Music Liner ヘヴィメタル大特集

明星 YOUNG SONG 1984年8月号

 

巨大音量で猛り狂う、地獄からの使者とは何者か!?

世界最高峰から、日本の怒れる若者たちまで全網羅!!

 

この夏、地球は壊滅するかもしれない・・・・・・。なぜなら、いま地球上は無類のエネルギーを秘めた地獄の使者たちに侵略されつつあるからだ。彼らの放つ“悪魔の金属音”は人々をほんろうし、やがて死に追いやるだろう。打つ手はないのか!見過ごす前に“敵”を知ることから始めよう!!

 

それは、レッド・ツェッペリンから始まった!

 

ヘヴィメタルという言葉が、ロック・シーンに定着したのは、1980年のことだった。アイアン・メイデン、サクソン、デフ・レパード、ガールといった若いグループが相次いでデビューした時、イギリスの音楽新聞「サウンズ」の編集長ジェフ・バートン氏が、“ニュー・ウェイブ・オブ・ブリティッシュヘヴィメタル”と呼んだことが、そのスタートとなった。

1960年代後期、今までブルースを追及していたイギリスのロック・グループは、新しい音楽のスタイルとしてブルースを発展させたサウンドを完成させた。ひとつは、ヤードバーズというグループに在籍していたギタリスト、ジミー・ペイジが結成したレッド・ツェッペリン。そしてもうひとつ、クラシック・ロックを追及していたディープ・パープルの出現だった。

彼らは、いまだにハードロックの王者として知られているが、確かに彼らが出現しなかったら、今日のヘヴィメタル・ブームはなかった。それだけ重要なグループとしての出現だったのである。しかし、不思議なことに、彼らは母国イギリスでは受け入れられなかった。あまりにも斬新すぎて、保守的なイギリスのファンは、彼らを無視してしまったのである。ところが、逆にアメリカでは大ヒットを記録し、全米チャートのトップ10にランクされる大きな成功をおさめた。この成功劇が逆輸入の形でイギリスに伝わり、母国イギリスでもようやく話題を呼ぶことになる。そして全英的な規模で人気が沸騰していった。

レッド・ツェッペリン、ディープ・パープルの成功は後続者たちに道を開き、多くの新人グループの誕生を誘発した。スプーキー・トゥースはヘヴィロックと呼ばれ、そしてユーライア・ヒープはハードロックと呼ばれ、“ハードロック・ブーム”は1970年代を象徴するムーブメントとして、大きくクローズアップされるようになった。

超大音量のボリューム、ベルボトムジーンズにTシャツ、そして長髪……あの世紀のイベント“ウッドストック・フェスティバル”(1968年)の精神を受け継いだハードロックの一大ブームは、ついには社会的現象にまで発展してしまったのである。

しかし、ハードロックは時代の流れの中でそのスタイルを変えない、頑固な音楽だとささやかれ、1970年代中期にニューウェーブが誕生するころになると、オールドウェーブとまで陰口されるようになった。とくに1976年から約3年間は、ハードロックの暗黒時代と呼ばれていたが、1979年夏、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリンを聴いて育った世代の不満が爆発。アイアン・メイデン、サクソン、デフ・レパードらの若きグループがデビューを飾り、ニューウェーブに対抗するヘヴィメタルとしてロックシーンを激しく揺るがした。

ヘヴィメタルは10代の若者の欲求不満のハケグチとして大爆発。アメリカの巨大なマーケットを目標に、ジューダス・プリーストスコーピオンズ、レインボー、マイケル・シェンカー・グループ、ゲイリー・ムーアといったヨーロッパ勢がまず進出し、アメリカのキッズを完全にノックアウトしてしまった。あっという間にゴールド・ディスクを獲得する偉業を打ち立て、さらにデフ・レパードクワイエット・ライオット、ヴァン・ヘイレンといったグループが、300万枚から500万枚もの売り上げを記録。1983年5月には、カリフォルニア州で35万人のファンを集めたヘヴィメタル・イベントが開催されるなど、もはやヘヴィメタルは、完全に時代の最先端を行くロックに成長してしまった。

 

本場イギリスをも圧倒した日本製ハリケーン

 

ヘヴィメタルのすざましいパワーは、ついに日本にも上陸。外国勢に対抗すべく、まずラウドネスが結成された。彼らは日本ヘヴィメタル界の頂点に立つグループとして、アメリカ、イギリスをツアーし、その比類なき演奏力の素晴らしさを見せつけた。ベテランのバウワウは、イギリスの伝統的イベント“レディング・フェスティバル”に日本勢として初めて出演。演奏後、アンコールを求めるキッズの声が鳴りやまなかった……というエピソードすら残している。また、日本の新世代ヘヴィメタルの申請としてアースシェイカーが登場。彼らはヘヴィメタルというよりも、ハードロックに近いメロディの美しい歌謡曲的な曲を発表してファンを驚かせた。日本語で録音されたにもかかわらず、イギリスのチャートでベスト20にランク。本場ロンドンのファンを圧倒してしまった。

その後、44マグナム、マリノ、アクション、X-Ray、メイクアップ、さらにカルメン・マキの意思を受け継いだ女性ボーカリスト浜田麻里、本城美沙子らが出現。日本もまたヘヴィメタルのハリケーンにすっぽりと包まれてしまった。

この夏、日本で世界の一大ロック・フェスティバルと同規模もイベント開催が決定。マイケル・シェンカー、スコーピオンズ、ホワイト・スネイクをフィーチャーした“スーパー・ロック’84・イン・ジャパン”、それにアルカトラスと日本勢が激突する“サマー・ロック・フェスティバル”などで、わざわざ海外に出かけなくても、身近でこのド迫力サウンドが見られる。10代の若者たちのエネルギーの祭典、この2大イベントを経験したら、きっと君もヘヴィメタルのとりこになってしまうだろう。その興奮と熱気の凄さは、プロレスの10倍ほどのパワーなのだ!

今やティーン・エイジャーの心を独占し、世界中の街という街で、“金属音”が炸裂!!そのうち、この強大なエネルギーは、地球をも確実に破壊に導くだろう。 <伊藤政則

 

ヘヴィメタルおすすめアルバムBEST5

 

これだけは聴いておきたい、ヘヴィメタル傑作アルバム。それぞれ微妙にタイプはちがうけど、超ド級のものばかり!

 

 ヴァン・ヘイレン

1984(ワーナー P-11369 ¥2,500)2年ぶりのニュー・アルバムは大ヒット曲「ジャンプ」を世に送り出した。全米で300万枚も売れたという本作は、ハードロックをはるかに超えた作風が感じられ、新時代のロックといえる。

1984

1984

 

 

レインボー

ストリート・オブ・ドリームス(ポリドール 28MM-0300 ¥2,800)元ディープ・パープルのリッチー・ブラックモア率いるレインボーの新作。リッチーの超能力的人気は根強く、とくに日本では圧倒的だ。ベストセラーの1枚。 

ストリート・オブ・ドリームス

ストリート・オブ・ドリームス

 

 

ジューダス・プリースト

背徳の掟(EPIC 25・3P-480 ¥2,500)この秋に5年ぶりの来日公演が実現しそうなジューダス。メタルの守護神“メタリオン”を主人公に描く、ドラマチックなアルバム。186トンという機材からしても史上最強のバンドだ。

背徳の掟

背徳の掟

 

 

 ラウドネス

撃剣霊化(コロムビア AF7246 ¥2,800)日本を代表するヘヴィメタル・バンド、ラウドネスのロンドン録音盤。曲作り、テクニックともに、世界のマーケットで通用するものを持っている。次作はアメリカでのデビューが決定。

DISILLUSION~撃剣霊化~

DISILLUSION~撃剣霊化~

 

 

アースシェイカー

フュージティブ(キング K・28P-432 ¥2,800)マーシーのハートのあるボーカル。そして、メロディの力強さ、歌謡曲の世界でも十分に勝負できるサウンドが、アースシェイカーの魅力だ。ハードロックを身近に感じさせる傑作。

フュージティブ(逃亡者)

フュージティブ(逃亡者)